尊き命


阿蘇湾(天の橋立)

先月28日、チリ大地震による津波が全国に押し寄せました。

「最大3メートル以上の津波となる可能性」として大津波警報等を出した気象庁ですが、その後「過剰予測だったのでは?」との批判も巻き起こりました。

確かに、気象庁の警報発令を受けて、住民避難や道路封鎖、公共交通の運休などが行われ、国民生活に与えた影響は絶大だったに違いありません。

しかし、これは筆者の私見ですが、人命への危険が懸念される場合、その備えは過剰なぐらいがちょうどいいというか、最悪の事態を想定して行動するのが当然だと思います。この点、皆さんは、いかがお考えですか?

そんな折、今回の津波に対する総括が、各自治体や政府機関等によってなされていますが、その中に海上保安庁がまとめた、残念な(むしろ情けない)データを見つけました。

そのデータとは、大津波警報等が発令されている最中、まさにその対象となっている海岸で確認されたサーファーの数です。

同庁や警察などによる避難指示を無視して海に出ていたサーファーの数は、同庁が確認しただけで全国に約1100人。

館山では昼過ぎに同庁のヘリが約30人のサーファーを確認し、拡声器により避難を呼びかけたものの、陸に上がったのは数人程度だったそうです。

さらに驚くべきは、あらゆるメディアが「海岸からの避難」を呼びかける中、1時間後にはさらに数十人のサーファーが新たに海に出てきていたそうで、同庁潜水士がヘリから海に飛び込んで、避難を説得する事態に至りました。

結局、この海岸には警察官も派遣され、一旦はほぼ全員が陸に上がったそうですが、同庁や警察が引き揚げると、再び海に戻るサーファーが続出し、夕方までこの状況が繰り返されたそうです。

また、全国の有名な各サーフビーチには、見物客を含めて50人〜100人が集まり、中には再三繰り返される避難の呼びかけに対して「これは犯罪なのか?自分の命なのだから、勝手にさせろ」などと、食ってかかる人までいたとか・・・

「遊びであるからこそ全力でやる」というスタンスには共感しますし、中にはプロもいたかもしれません。

さらに「死んでもいいと思っている」と言われてしまえば、それまでかもしれません。

ですが、あの日、津波警報を知っていながら、避難可能だったにも関わらず海に出ていた全ての方には、理屈でなく、心底から申し上げたいと思います。

「どれだけの人間が、どれだけの犠牲と危険をはらい、貴方を危険から守ろうとしたのか」と。

そして「貴方の命はそれほどに尊いものなのだ」と。

前述のようなサーファーは極々一部であることを、サーフィン界の名誉のために申し添えます。


海守より